検証・都市伝説
「北海道の踏切事故」
真冬の北海道某地。ある女学生が遮断機の下りた踏切を渡ろうとして転び、走ってきた電車に轢かれ胴体を真っ二つに切断されてしまう。救急隊員が駆けつけると、少女の上半身がむくりと起き上がり、「助けて…」と何度も呻きながら、次第に動かなくなっていった。北海道の寒さが、切断面を瞬時に凍らせてしまったため、出血が止まった少女は即死しなかったのである――。
比較的有名な都市伝説である。バリエーションとして「駆け寄ってきた人に襲い掛かる」「『私の足はどこ!?』と絶叫する」など、より過激なものもあるが、どちらにしろ常識では考えられない話である。舞台をわざわざ北海道に限定しているのも、「傷口が一瞬で凍る寒さ」に説得力を持たせよう、という意図が露骨で興醒めしてしまうほどだ。
ところか、この都市伝説の源泉となったと思しき事件が存在するのである。昭和10年5月31日の『東京朝日新聞』(現在の朝日新聞)の記事によると、同年5月30日深夜、東北本線赤羽駅付近で、20歳の女性が飛び込み自殺を図った。貨物列車に轢かれ両脚を切断する重症を負うも即死せず、それどころか駆け付けた係官とスムーズに問答。「勝手に死ぬのですから遺書なんか書きません」とはっきりした声で話したという。記事ではその後の女性の生死は不明である。仕事をクビになったことが直接の動機だったそうだが、女性は過去にも服毒自殺未遂を起こしていたという。
第二次大戦前の、それも東京で起こった、特異な自殺未遂事件。それが新聞報道を経て人々に知れ渡ることになり、その噂話に「寒い北海道」「不慮の事故」「緩慢な死」などといった「もっともらしい」改変が行われた結果、逆にウソ臭さ全開の都市伝説に結実する。都市伝説誕生の過程は実に奇妙なものである。[10/16 UP!]
▲自殺未遂の記事。内容を読む限り、女性は今で言うところの「プチ家出」か、喫茶店を渡り歩く「難民」的な暮らしをしていた模様。
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